当社は自らに高い基準を課しています。それがお客様の期待にどうマッチしているのか、そして取引関係の管理にどう役立っているのかを説明します。
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CDMO アドラゴスファーマ:アジャイル型の新星CDMO
最近の国内市場における医薬品の供給不安は、川越工場の新規買収により供給に意気込みを見せるアドラゴスにとっては追い風といえます。たとえば、大手製薬会社が日本での上市に向けて準備している新開発品のサポートもできると考えられます。
アドラゴスファーマは、生産を増強することで日本国内のお客様の役に立ち、国内の医療システムとそれ以外の分野にも貢献したいと考えています。日本法人社長の柳澤敬三は「国内市場だけでなく、アジア全域の市場にも納品できるかもしれません。川越拠点のキャパシティと能力はかなりのもので、アジア地域内の国際的な製薬企業顧客向けのハブとなることを目標に掲げています」と述べています。
これまでのCDMO市場では、急速な変化・イノベーションや頻繁な新規企業の参入はありませんでした。相対的な位置づけの変化は多少あったにしろ、顔を並べる企業に変わりはありませんでした。ところが最近、とある新顔が現れ注目を集めています。
期待の新星といわれているのが、2020年にミュンヘンで設立されたアドラゴスファーマです。同社はここ2年間で複数の生産拠点を傘下に加えています。最も新しい買収案件は東京近郊のサノフィの基幹工場で、日本国内で最大級の工場です。他にも、2023年3月にはクリニジェングループの開発部門であるLamda Laboratoriesを買収しています。
本記事執筆中の時点で、アドラゴスの世界でのフルタイム当量(FTE)は750人で、フランス、ドイツ、ギリシャ、日本で拠点を運営しています。2022年には製薬・CDMO業界全体が荒波にもまれたにもかかわらず、アドラゴスは業界内での拡大を進めているのはたいへん興味深い現象です。その成功の裏にあるのは一体何でしょうか。
秘訣を探る
アドラゴスの経営陣には、製薬やCDMO業界の経験が豊富なベテランが揃っています。こうした事業は目新しいものではありませんが、今回は既存のノウハウを活かしつつ全く違ったアプローチを取っています。
設立者でCEOのアンドレアス・ラーベ博士は、今回の戦略をこのように簡潔にまとめています。「実際には、ほとんどのCDMOがしている「内容」は大差ありません。当社はその「やり方」を変えているのです。具体的には、お客様中心主義、サービス優先、ミッション優先。技術的なノウハウと卓越したサービスに加え、お客様とのやりとりを真に喜んで頂けるものにすることも同じくらい重要です。どの業界でもそうですが、お客様は良い経験ができるところに集まり、留まり続けます。」
アドラゴスには、明らかに重点を置いている地域があります。欧州、日本そして北米です。これらの地域には、品質基準が高く、取引関係を保つうえでの顧客からの期待値が高いという共通点があります。本記事執筆時点で、アドラゴスは拡大を続ける顧客基盤に対応できる世界5か所の拠点からなるネットワークを有しています。フランスにある工場は、欧州内のアンプル生産拠点の中でも最大級です。ドイツにある工場では、液剤や半固形剤の生産のほか、固形剤の受託包装も行っています。日本には拠点が2か所あり、低分子・高分子医薬品の検査、再試験および包装サービスのほか、アンプルのEnd to End製造も行っています。また、固形剤全種の製造も行っており、国内市場で需要の多い錠剤印刷などの特殊サービスも扱っています。
日本での確固たるプレゼンス-独特の立ち位置
欧州や米国市場と比べてCDMOへの委託が浸透していない日本の製薬市場ですが、アドラゴスはそこに可能性を見出しました。最近のサノフィ拠点の買収により、アドラゴスは市場最大手の海外企業となりました。経営陣は、日本での強固なプレゼンスを得たことにより、他社には持ちえない独特の能力を顧客にアピールできると期待を寄せています。日本市場を熟知しており、日本独特の完璧な包装を求める外観的な要求、それに伴う現地での外観検査の必要性など、高品質を求める要件にも完全に対応しています。
のバリューチェーン-開発にも対応
2023年、アドラゴスはクリニジェングループの開発部門であるLamda Laboratories(アテネ)を買収しました。「ライフサイクル管理、剤形追加、それに新規分子の製剤から商用生産にまでお客様のニーズがあるということを認識する必要があります」とラーベは語ります。「そのため、開発を任せられる ことは良きパートナーとして重要なのです。多くのCDMOは生産しか行っていないためなおさらです。」
そしてアドラゴスは、製品開発の初期段階から、スケールアップ、治験、そして小・大規模商用生産まで対応できる能力を携えてEnd to End産業に参入しました。同時に規制関連サービスも開始しています。世界の約70名の科学者がこうしたサービスに従事しており、アドラゴスは需要に応じて増員も予定してます。
今後の展望
「製薬業界全体、特にCDMOは、デジタル化において後れを取っています」と話すのはCTOのマルコ・ゴーガスです。「ほかの業界では当たり前のものでも、医薬品製造受託業界では取り入れられていないものが一定数あります。」アドラゴスは電子メール、電話などによるやり取りを減らし、より統合された方法での顧客・サプライヤー間のやりとりを目指しています。「技術的なノウハウと卓越したサービスに加え、お客様とのやりとりを真に喜んで頂けるものにすることも同じくらい重要です。」
アドラゴスは設立当初から、お客様中心主義のCDMOになるという非常に明確な戦略を掲げており、違いを生むのは「ソフト面」の能力であるとしてきました。一方で、顧客体験の向上のために実際の「ソフトウェア」のソリューションも採用する戦略で、一部の顧客を対象としてこのプロジェクトの試験導入を行っており、データ活用の重要性が確認されました。また、最近同社ではデータ専門家も迎え入れ、社内の視点(品質確保、効率アップ、安定供給の確保に重点)と顧客の視点(情報の透明性、リアルタイムのアクセス、やり取りの簡素化を求める)からの分析を行う予定です。
アドラゴスを支えるのは
アドラゴスの所有構造は少し変わっており、ノルウェーの投資家(FSNキャピタル)とドイツのファミリーオフィス(プランゲグループ)、そして設立時CEOにより共同所有されています。3者とも長期的視点を持っており、ミッションステートメントや年次報告書の判断においては、成長志向に加えて環境的・社会的な要素(ESG)も非常に重要視しています。ESGの原則はすべての大手製薬企業のアジェンダに組み込まれており、アドラゴスもこれを承知しており、そうしたアジェンダへのサプライヤーとしての貢献を意識しています。
出典:https://www.pharmatechoutlook.com/adragos-pharma